はじめてのスイーツマラソンで、食べて走る充実感を得る。
マラソンが流行っている。
記念事業にどうですか、と勧められるものの一つだ。
スミレは走るの大嫌いだし、体力的にも無理。42.195キロなんて有り得ない。しかし、マラソンといっても近頃はいろいろある。短い距離なら意外とできるかもしれない。おちゃらけた遊びのような走るイベンもあるみたいだしね。早く走るのが目的でないものならできるかも。
で、スイーツマラソンを選んでみました。距離は6キロ。
スミレの只今の運動能力は、「6キロ走ったことなんて、20年以上前かもしれないが、5キロ歩くことはたまにある。」くらい。
スイーツを食べながら走るって、よく意味わかんないけど、サイトにはずらりと並んだスイーツに群がる人々の写真が載っている。走り終わってからのご褒美的な??
「スイーツマラソンに出ようと思うんよ~」というと、食いしん坊の娘二人と、元本格ランナー(短距離だけど)、アシコが一緒に参加することになった。
3週間後にスイーツマラソンが迫ったので、さすがに少しは走った方がいいかと、3キロほど軽くジョギングしてみた。しかし、本当に何年も長く走ったことがないのだ。歩くくらいのスピードでゆるゆる走りだ。
結果、翌日右膝が痛くなった。やばい。アシコの指導で冷やして安静にした。
2週間後にスイーツマラソンが迫ったころ、椅子に座った状態で、両手で肩を抱いて(つまり手の反動を使わずに)片足を前に浮かせて立つ、という筋肉がどれくらいあるかを測るための運動?をした。座る椅子が低くてもできるほど良いという。
これがびっくり、なんと普通の椅子で全く立てない。うそでしょ?スミレ50歳、こんなはずではなかった。
明らかに腿に力が入らないので、階段の上り下りをちょこちょこするようにした。だんだん6キロ走れるのか、不安になってきた。
来週にスイーツマラソンとなり、もう一度、軽くジョギング。4キロくらい。走り終わると足ががくがくする。でも今回は膝も痛くならない。
6キロ。まぁ大丈夫じゃない?ダメでもいいや。
目的は走るよりスイーツだし。と思うことにする。
明日が本番になる頃には、スイーツマラソンとはどんなものか、だんだんわかってきた。
コースは2キロを3周するという周回コースである。スタート地点から一番遠い感じの地点にスイーツを並べたステーションというものがある。ここでしかスイーツは食べ放題ではない。つまり、走り終わったらもう食べられないのだ。ここでちょっとショック。ちっ、コーヒーと一緒にゆっくり食べる、なんてできないんだ。。。
速くゴールしない方がたくさん食べられる。でもやっぱりちゃんと完走したいしな、せっかくだし。6キロコースは制限時間50分なのだ。食べて走って、もしかしてすごく忙しい?
ペース配分は、アシコに任せよう、よくわからないし。
こうして当日を迎えた。
福岡のスイーツマラソンは、海の中道公園で3月初めに開催された。
案内状は、駐車場が混むから車で来ないでオーラを出しまくっていたが、車で行った。走って疲れて電車を乗り継いで帰るなんて、50歳にはハードルが高すぎる。しかし渋滞してたりするのも嫌なので、朝6時に出発した。もちろん朝ごはん抜きである。さすがに水分は取っておかなくては、とペットボトルを用意したが、固形物はスイーツ一筋だ。
天候は、前日雨。朝方まで降っていたが、出発する頃には止んでいた。雲は相変わらず重く立ち込めており、今にも雨粒が落ちてきそうである。どうか、走り終わるまでは降りませんように。
受付を済ませ、ゼッケンをつけ会場へ向かう。タイムはゼッケンに着いたセンサーが測ってくれる。
会場には、いるいるたくさんのランナーが。こんなイベントで走り慣れた感じのコスプレイヤーはお互いに写真を撮りまくっている。「鍛えてます」オーラを放つ、いかにもな「ランナー」は、準備運動に余念がない。スミレたちのようなちょっと照れ気味の親子なんかも多い。
アシコと相談して、一周15分のペースなら余裕だろう、ということになった。スタートしてスイーツステーションで食べおわる、までを8分で(アシコが)タイマーセットし、合図で復路につくことにする。といってもその辺スミレはアシコ任せでお気楽だ。
コース別に分かれて走る。スミレが走る6キロコースは、一番初めにスタートだ。
8時50分、スタート。どどどどどっと一斉に走り出すさまは、スミレの気分を盛り上げる。よーし、頑張っちゃうよ。と、初めは周りに合わせてややスピードを上げてみた。が、速い!みんな速すぎるよう!なんと娘二人はその波に乗ってあっという間に遠ざかっていく。若さにはかなわないわ~。
アシコは?スミレより少し遅れた位置でペースを保っている。「そんなに速いと持たないよ~。ゆっくりいこ~」
そうか、周りにつられてはいけない、焦るな焦るな。アシコと並んでドタバタと人の波を抜いたり抜かれたりしていると、前方に白いテントが見えてきた。スイーツだ~~~!!!本日の第一目標だ~~~!!!
テントの手前に行列が出来ている。何の行列?なんと手を消毒する列だ!アルコールを手にシュッと一吹きするために並んでいる。それと理解するや、もちろんスミレはすっ飛ばしてスイーツに群がる人山に乱入した。「こんなのに並ぶなんて、日本人やな~」とアシコも同様だ。日本人は清潔好きでちゃんと並ぶということだが、スミレもアシコも日本人だったはずである。
パッと見、チョコレート菓子がカラフルに並んでいる。ちょいちょいとつまみながら、ざっと見ていく。ケーキ類は小さくカットしているのに楊枝がさしてある。食べ放題なんかでよくありがちな感じのケーキだけど、まぁそんなものでしょ、全部を食べるのは時間もお腹の空間も足りないので、美味しそうだと思うものを瞬時に見分け食べていく。これは決断力と判断力を要するマラソンだ。とにかく急ぐがねばならない。
スイーツステーションでは頭がスイーツのことでいっぱいになるので、アシコと離れてしまった、食欲がちょっと落ち着いたところでお互いに相手を探し出し、合流する頃には出発の合図のタイマーが鳴る。
飲み物は、ステーション直後に水とお茶とスポーツ飲料が用意されている。走りながら紙コップをとって飲んで捨てると、うわぁマラソンランナー気分が上昇する。
タイムはアシコに任せっきりにして、とにかく走る。残念なことに雨もパラついてきた。
2周目、ステーションが見える辺りに来たところで、おにーさんがマイクで叫んでいる声が聞こえてくる。「ただいまチーズタルトが登場です、チーズタルトです!」瞬間、きゃーーーー!と嬌声があがる。おぉ、急がねば!ところが、着いた時にはもうないのである。「もう少ししたらエッグタルトが出ます!」またもおにーさんが叫ぶが、これを待っている時間はない。なんなの、このジレンマ。
なくなったところに新しいスイーツが補給されたりしているが、基本はあまり変わっていない。食べていないものを選んでパクついていく。だって、せっかくだもん、出来るだけたくさんの種類を食べたいではありませんか。タルトも食べたかったのに。
3週目、もうこれがラストだ。あっという間に走ったみたいだが、結構長く感じる距離を黙々と雨に濡れながら、スミレとアシコは走り続けている。くたびれてきた。
エッグタルトの姿も既にない。すべてはタイミイングの問題だ。
新しく杏仁豆腐が配られている。でも取りやすいように作られてなくて、おねーさんがパックから少しづつ小さい容器に取り分けているが、全く間に合っていない。何やってんだ、大渋滞だ。ダメだ、これも諦めざるを得ない。
とにかくこれで最後なのだ、目につくものから口に放り込む。美味しいとか甘いとか感想は後回しで食べることに専念する。
おにーさんが叫ぶ。「制限時間まであと8分です!今出れば余裕でゴールできますよ~!」おぉそうなのか、仕方がない、ゴールへ向かって行くぞ。
スミレとアシコはペースを保って順調に走っているつもりだった。おにーさんも余裕って言ってたし。
途中、既にゴールした娘が声をかけてきた。「頑張って~」
「はーい」なんて暢気に答えていたら、突然アシコが隣で叫んだ。「スミレ!あと1分切ってる!」ゴールと、その横にある大きなデジタル時計が見えたのだ。え?目の悪いスミレには、時計の数字はおろかゴールがどこだかわからないような位置にいるのだよ、まだ。
あわててスピードを上げる。スミレの前にも後ろにもたくさんの人がいるが、なにこの人たちみんな脱落組?ゴールどこ?とにかく走る走る。
やっとスミレにもゴールがわかった。時計は残り20秒?わわわわわ~全力で走り抜ける。
後で、娘が、声をかけた時には絶対間に合わないと思ったと告白した。
スミレも、ゴールラインが分からず、間に合わなかったかと覚悟した。
しかーし!完走証明のタイムを見ると、49分47秒、タイムアウト13秒前にゴールインしたのである。スミレ、頑張った!
このギリギリゴールのお蔭で、充実感が半端なかった。最後にこの猛ダッシュをしていなかったら、こんなに「スイーツマラソン楽しかった!」にはなってなかったと思う。何かを達成する、というのはこんなにも人を幸福にするのである。人生をより楽しむには、乗り越える試練が必要です、やっぱり。
雨もひどくなり、イベントはまだ続いていたが、早々に帰った。
あぁ楽しかった。このマラソンには、ものすごい種類と量のスイーツが準備されていたらしいが、50分という時間制限は絶妙と言えるだろう。食べるに重きを置いたかなりの人がゴールしていないはずだ。
だが、出るならやはり、完走を目指すことをお勧めする。
食べられなかったスイーツたちの思い出も含め、スイーツマラソンが楽しかったのは、完走ありきのように思えるからだ。
満足だ。もう二度と参加しないけど。
スイーツは、やっぱりコーヒーと一緒に、ゆったりいただきたい。
はじめての競馬は、うっかりハマりそうな罠がいっぱい
久し振りに書くのですが、まぁ勘弁してね。
ジャジャジャーン!競馬デビュー!
小倉競馬場へ行ってきた。近くにあるが、中に入ったことはなかった施設である。スミレはギャンブルに近寄らないようにしている。
何故と言うに、スミレの親父は、ギャンブルにすべてを捧げ、妻から離縁された男だからだ。子どもの頃に別れて以来、スミレは母子ふたりで育った。母は、あるはずの収入を博打に持っていかれるより、少しの収入でつつましく暮らすことを選び、夫を家から追い出したのだ。英断である。
よくあることで、スミレは周りの大人にこう言われて育っている。「絶対にギャンブルはしてはいけないよ。やり始めたら止まらない、あれはもう病気なんだから。お前にはその血が流れているのだから。隔世遺伝もあるからね、子どもにも絶対にさせないように。」
いい子のスミレちゃんは、こうして50歳まで、公営ギャンブルには行ったことがないのである。
だがもう、50歳。いい加減分別もつき、いまさらハマることもなかろうと、今回の企画に入れてみた。
よくテレビで話題になるような、大きなレースより、まじかでリアルな馬を見る地方競馬に行くことにする。あらかじめ身近な競馬ファンに下調べをしておいた。
2月某日。前日から雨がしくしく降っており、行くのがものすごく面倒だったが、ひとり小倉競馬場へ向かう。駐車場に車を入れ、入場券100円を買う。小倉競馬場は、新しくて建物が綺麗だ。ゲートをくぐると、通路を下って屋根のない開けたところへ続いている。
おお、いきなりもう馬がいるいる。パドックという所のようで(パドックという言葉はマンガで覚えた)、馬が人にひかれてパカパカと歩いている。観客はあまりいない。
馬は綺麗だ。生きものは好きだ。見ていて飽きない。たぶんこれから走る馬なんだよね、どれに賭けようか・・。
実は行く前から馬を選ぶ基準は決めていた。綺麗な馬に賭ける。
ところが、どの馬も本当に綺麗なのである。むむ、とりあえず大きくて立派で、バランスの取れた感じの・・なんて考えながら見ていると、「とーまーれー」と号令がかかり、騎手が乗ってまた歩き出す。騎手が乗っていない馬もいる。
騎手さんを見て、馬を見て、えーっと一番きれいな感じは・・。お尻のでかいのがいいかなぁ。いやシュッとした方が速いかな・・。
などと一生懸命うんうん考えているうちに、ふと気が付くと周りが人でいっぱいだ。みんな黙って難しい顔してじっと馬たちを見つめている。なんかすごい。真剣だ。
電光掲示板に、いろいろと数字が書いてあるが、よく意味が分からない。そのうち馬がみんないなくなってしまった。さぁ、賭けに行かねば。
建物に入ると、人が沢山いた。どうやらカードに書いて自販機のようなので賭けるらしいが、まずそのカードが何種類もあって、どれに書いたらいいかわからない。一番基本っぽいものを取るが、これまた書き方がわからない。
複勝とか連勝とかあるのは知っているが、むむむ・・。普段のスミレならその辺の人を捕まえて聞くのだが、ここにいる人は皆殺気立ってて忙しそうなのである。声かけるなんて申し訳ない感じなので、まぁやればわかるか。
カードの書き方や賭け方を理解するのは面倒になったので、わからないままとにかくやってみる。どうやら書き方をミスったようで、機械の横からおばちゃんが出てきたりといろいろあったが、ここには結果だけを書く。
スミレは4つのレースに賭けた。
はじめに、綺麗な馬3頭を選び、次は好きと思う馬3頭、その次は落ち着いている馬1頭と元気いっぱいな馬2頭、最後に落ち着いた馬3頭。
はじめの2レースは単+複(←よくわからない)で1200円、その後単勝で600円を賭けた。「複」がわからないので、もう単勝のみにしたのだ。全部で1800円を投じた。
で、2つのレースで先頭を当て、合計2710円をゲットした。駐車場代が1000円かかるからまぁとんとんだ。
さて、「初めての競馬」であるが。
これはもう、独特の面白さだった。今回スミレは何人かに一緒に行かないかと声をかけたが、振られたので一人で行った。そして、競馬場でも誰とも話さなかった。この数時間、ずっと、黙って、ただもくもくと馬のことだけを見て考えていたのである。
特にパドックで、あれだけたくさんの人がいながら、静寂を保ち真剣にみんなが馬を食い入るように見ている様は、普通体験することがない高揚感がある。一人で行って正解だった。大勢の中で、一人でじっと考える、これがとても面白い。
レースは、ゴール前で見るより、観覧席の上の方から見る方が面白いことも分かった。レースによって、スタート位置や距離が違うようだということも分かった。そしてやはり馬は綺麗だった。
レースが始まり、ゴールに近づくと、周りがうわーっと賭けた番号を叫びだす。楽しい。賭けた馬がゴールした時なんか飛び上がる程嬉しい。でも一人だから、嬉しさを押し隠し、そ知らぬふりして馬券を換金しに行くのだ。
勝ったからといっていくらになるのか、スミレは機械に馬券を入れてみないとわからない。今回はじめ260円返ってきたので、次もそれくらいかと思ったら2450円になって仰天した。思わずぎゃーと言いそうになる。ビギナーズラックというやつだろう、こんなことされたら好きになっちゃう・・と、慌てて家路についたのであった。
ハマりはしないが、当たったこともあって、とてもとても楽しい時間だった。見て考えるのが楽しいので、また小倉であるときには行ってみたいものだ。
もちろん、誰にも言わずに、一人で行こうと思う。
ああ、きっと行っちゃう。これハマっちゃったのかな。
写真はバレンタインデーにちなんだ、チョコ製の馬。
はじめての50歳を50本のロウソクで祝おう
2016年2月某日
スミレは50歳の誕生日を迎えた。
どうせ自分で作るのだから、ご馳走などはしない。外食するのももったいない。ケーキだけは買うことにする。甘いもの大好きなのだ。
予約などしていなかったので、3軒回って好みのチョコレートケーキを探した。
どうですか、美味しそうでしょう。大人っぽくシンプルで高級そう。
この日のために準備していたロウソクを立てる。細く長いもの、楽天さんで購入。はじめに淵にぐるりと立て、残りを中に立ててみる。
50本、意外と余裕で立てられた。大きいケーキを買わなくてよかった。
火をつける・・これが難しい。つけやすいよう内側からと思うのだが、どうしても位置的につけにくい場所が出てくる。チャッカマンの火を近づけると簡単に点火するわけでもなく、意外と時間もかかる。もたもたしていると、ロウソクが溶けてケーキに落ちたり、短くなったりして焦る。こんなバカなことしてて、火事になったら目も当てられない。途中水を用意しておくべきだったと思う。ロウソク同士が近く、火がくっついて大きくなったりするとビビる。
準備できた。スミレの家では、この時点で家族が「ハッピーバースディツゥユー」ってやつを手拍子しながら歌うのが慣例だ。はい、みんな歌って~と声をかけるのはスミレだけれども。合唱の中、まるでキャンプファイヤーのごとく燃え上がるロウソク。楽しい。
「おめでとう~~~」の声で、「ありがとう~~~」と答え、ふっふっふ~~~っとロウソクを吹き消した。一息では無理なので三息くらい。
火をつけている時に、ロウがポタポタケーキに落ちたので、それもきれいにとってカットする。
ロウソクを抜いた穴がぼこぼこだったが、全く気にならない、美味しいケーキだった。
生まれて50年。
「恥の多い人生を送ってきました。」とは思わないが、自慢できる人生でも決してない。
だが、50年とはあらためて感慨深い。半世紀生きたのだ。長い。
スミレの子ども時代と比べ、世の中はとてつもなく変化した。身の回りの人間も変わった。人々がやることも言うことも変わった。
スミレも変わった。
その昔、確かにあったはずのあの時間、あの空気、あの時のスミレはどこにいったのだろう。昔が良かったとは思わないけれど、もう二度と取り戻せないものを懐かしみ、苦しくなる。
今はいない人もいるのだから、こうして50歳を祝えるのは、本当に幸福なことだ。
あと50年経ったら、どんな世の中になって、どんな人間がどんなことやっているのだろう。
今よりも笑っていられる未来であるように。幸せを感じる人が、今より一人でも多い未来であるように。海も空も山も美しくあるように。
50年後、100本のロウソクを立ててお祝いできる世界であるように、祈る。
はじめてのピアスは、ヘタレの証明 その4
またピアスの話。
結論から言うと、ピアスホールはつぶすことにした。
ファーストピアスを一か月つけたが、穴は未完成。しっかり傷口が穴として確立されるように、毎日ピアスを付けた。
夜もつけると腫れたため(たぶん耳を枕に押し当てるから)、毎朝、まず穴の入り口を爪でカリカリして、一晩でできたかさぶたを除去する。
それから、穴にピアスを挿す。痛くないようそーっとそーっと突っ込んで、でも出口近くで止まる。入り口同様塞がりかけているのだ。そこはえいと強く押し込んで突破。いたたた~となる。を両耳繰り返す。
苦痛ですよ、これ。
でも、つけてしまえば痛くないし、かわいいし。スミレは努力した。
ところが、そうして2週間と二日目。いつものようにかさぶたを取った後、挿し込んだピアスが、出口よりかなり手前の感触で止まってしまった。穴が塞がっている。
えいえいとぐりぐりしてみても、痛いばかりで少しも動かない。力で破るには、距離感がある。突破できるかもしれないが、かなり痛いぞ。きっと。
こんなにさっさと傷がくっついてしまうとは、スミレの治癒力は高すぎるのか?
さて、どうする。
無理やり突破。→ めちゃくちゃ痛い。が当分続く。
あきらめる。→ 自由確保。
一瞬だけ、迷った。が。
はい、あきらめます。
もうなんか気持ちの限界。毎朝の格闘に疲れた。耳のこと考えるのも疲れた。痛くないように触るのも、服脱ぐときに気をつけるのも、疲れた。
気ままで自由を何より愛するスミレには、無理なオシャレだったのだ。
こうして、ピアスをつけることを放棄した。
あぁ、かっこわるい。
ヘタレの烙印を押された気分。でも束縛からの解放感の方が大きい。
はじめてのピアスは、大失敗に終わった。
何事もやってみなければわからない。
世の中には、ピアスがうまくいかない人もいるの。勉強になりましたわ。
ピアスに失敗するのは、原始の世界なら成人に失敗したようなものだろう。そんな世界なら、スミレは我慢できなかった半端な人間として扱われるな。現世の人間で良かった。50歳でその仕打ちは辛すぎる。
申し訳ないのは、アシコにもらったピアスが2回しか使用できなかったことである。可愛かったのに。
多少未練を感じたものの、きっぱりできないものなのだと納得したスミレである。
下手に傷ついた意外と厚い耳たぶが、できるだけ綺麗に回復することをひたすら願って、ピアス騒動は終わりとする。
はじめてのピアス、苦難の道はまだ続く その3
1か月経った。やっとファーストクリップを外せる!
さぁ外してみよう。まずうまくいっている左。いてて、抜くのにちょっとだけ痛い。ポコリと穴が見えるのかと思ったが、耳たぶに赤い点がついている感じ。穴ではない。
右も外す。こちらもそんなに痛くはないが、赤い点の周りも赤く、腫れている。触ると固い。まだ明らかに傷だ。
とりあえず、フリーになった状態でもう一度きちんと消毒して、その日は寝た。耳が自由って素晴らしい。
さて、とうとうファーストではない、普通のピアスをつけてみよう。どうみてもまだ、ピアスホールは完成形ではないので、毎日つけておいた方がいいだろう。
仕事でもあまり目立たないようなシンプルなピアスを用意した。金属アレルギーが出ると嫌なので、ホールに挿す部分がプラスチックのもの。
で、挿す…挿そうとするけど…えーなにこれ穴ふさがってる?
赤い点状の、穴があるはずの場所にプラスチックの棒を挿そうとするが上手く入らない。どうなってんの?爪で赤い点をひっかいてみる。あ、なんかかさぶたみたいの着いちゃってる。カリカリと落として、再チャレンジ。
お!おお~!!するするとスムーズにピアスが穴に入っていく。快感じゃ~!やっぱつけるとカッコいいぞ。
んじゃ右ね。昨日より腫れも治まっている。こっちはかさぶたというより、まだリンパ液みたいな汁が出て固まっている。やばそ。カリカリ落としてさぁ……あれ~??
こりゃまた入らないんですわ。たぶん方向があってない。耳たぶをひっぱりながらなんとか頑張っていると、とりあえずちょっと穴に先端が入る。そのまま入れようとするけど、これまた方向が難しくて、無理にすると痛いからそっと丁寧に挿していく。入る…が、最後、止まる。穴の出口がかさぶたにより塞がっているのだ。ここは力で押し込む。ぷちっと音がしてやっと装着完了。あいててて・・。
いや~~~、大変っすよ、こりゃ!
しかも、この上の文章、何のこと書いてあるんだか、もう嫌になっちゃうレベル。
休みの日には、ピアス派のアシコからもらった手作りのピアスをしてみる。これはチャラチャラと揺れる石がついた、キャッチのない、金具がキュッと曲がったタイプのもの。プラスチックのより細い。
でもこれも入れるのはやっぱり大変。装着苦労は同じ。
でも、つけるとかわいいのも、やっぱり、なのである。
ピアスホール完成はまだかかりそうだ。普通のピアスをしはじめて一週間、穴は依然はっきりせず、毎度入れるのに手間がかかる。これってまだファーストピアスしてても良かったレベルなのではないか?
そこでスミレは無精をしてみた。夜外していたプラスチック型ピアスを、つけたままにしてみたのだ。ファーストピアスと同じ状態じゃん?朝つける手間がいらないし。ホールが綺麗にできるかもだし。
しかし、二晩過ぎて三日目、左耳が痛く腫れた。失敗だ。
外して一晩寝ると、腫れは治まった。
以来、毎朝まだ傷を治しつつ、装着に手間取っている。
アシコが言うには、とにもかくにも続けていけば、傷は癒えて穴は完成し、挿すのも簡単になると。それまでの辛抱だと。
しかしね。どう思います?ピアスつけるって、こんなに面倒なものとは知りませんでした。というのが一番の感想である。開けた後が大変じゃないか。しかも時間かかる。
その他ピアスをつけて思ったこと。
自分の耳たぶが厚い、なんて思ったことなかったが、意外とどうやら、厚い方なのかもしれない。
老眼になってピアスを始めると、穴の位置がわかりにくい。
面倒なのが嫌な人には向かない。
だが、つけるとやっぱりかわいい。原始的だけど。
ピアスホールが完成したら、また報告するよ。
はじめてのピアスは、忍耐を要する。その2
ピアスホールをやっとこさ貫通させたスミレの続き。
ファーストピアスをつけたまま、消毒をする。ピアスはやや余裕を持った感じでついている。ヘッドとキャッチを持って、耳たぶを間にゆるゆる動けるくらい。その隙間に消毒液を付けた綿棒を入れて傷を消毒する。そうして1か月すると、傷は癒え外した時には穴が開いた状態になるわけね。なるほど。
毎日消毒しながら、2週間。寝ている間もつけたまま。
スミレは寝る時、横を向くことが多い。2週間目、布団の中で、どうにも鬱陶しい思いが沸き上がってきた。外したい。耳を枕に押し付けてスリスリして寝たい。外したらどんなにスッキリするだろう!と思う。
我慢我慢。右耳が触った時にちょっと痛いときがあるけど、順調にいってるはずなんだから。あと2週間の辛抱なんだから。
意志の力で、身体の欲求を押さえつける。
うまくいっている・・と、思う。たぶん、左耳は完璧。でも右はちょっとアヤシイ。
どうやら左に比べて、やや厚みのある場所についている。もしかしたら、耳自体が右と左では微妙に違うのかもしれない。そのせいか、やっぱりたまに痛い。
でも今はどうしようもないし。化膿したりはしてなさそうなので、ともかく1か月、残り2週間頑張ろう。
ピアス反対派の友人たちに会う。
「ぎゃー、何ピアスなんてしてんの、痛そう―!」痛い痛いと騒がれた。痛いのはスミレだっちゅーの。
開けること自体は、確かに本当に痛くない。衝撃があるだけで注射より痛くない。そして、開けた後もほとんど痛くない。たまにちょっと痛いだけだ。
「痛くないよ~」と言っても騒がれるだけなので、面倒だから「めっっちゃっっ痛いよ!もう痛くて痛くて転げまわったよ!」と言うことにする。そうすれば反対派のみんなは満足するしね。
しかしこうして、やってみて思うが、ピアスって原始的だよね。身体に傷つけてアクセサリーを身に着けるんだから。どこかの部族の成人の儀式とか、そんな原始的風習の匂いがぷんぷんする。近代的ではない行為だ。
スミレは、過去の時代の女になった気がした。
早く1か月経たないかな。耳が自由になりたいな。
1か月経てば、大丈夫。この考えは、浅はかだった。・・・・・続く~!
はじめてのピアスはぜんぜん簡単じゃなかった。その1
この1か月、いつも耳を気にしているスミレである。
2015年12月、ピアスを開ける。つまりピアスをつけるための穴を、耳たぶに開ける。
ピアスの方がかっこいいなぁと思いつつ、特に必要にも迫られず、わざわざ痛い思いするほどでもないし、と開けなかった。大体スミレはオシャレさんではないので、開けてもピアスをしないかもしれない。面倒で。
「開けてみようかなぁ」と呟くと、開けてる人は皆賛成し、開けてない人はみな反対する。
開けてる人曰く、「イヤリングやクリップみたく痛くない(そうだね、あれ結構痛いのよ)。イヤリングより可愛いのがいっぱいある。」
開けてない人曰く、「痛そう。今更してどうすんの?自然に反している。不良だ(それこそ今更?)。」
開けると運が落ちるとか、運命が変わるとか、いろいろ聞くけど。
50周年だもん、やるなら今ってことにしよう。よし、開けちゃうよ。
「開けるなら病院がいいよ」と言ってくれる人もいたが、記念事業として自分でやりたい。楽天さんのポイントで買いました、ピアッサーというらしい穴あけ道具。両耳開けるため、2個セット1500円くらい。
誰かに位置を確認してもらうのがいいのだが。でも、今すぐ開けたい。せっかちで待ち切れず、無謀にも鏡を見ながらひとりで挑戦してしまう。
まずは、位置を決めて印をつけよう。うーん、ど真ん中?いや待て、安堂さんに訊いてみよう。あ、ちょっと端の方が揺れるのつける時にいいのね。じゃ、この辺?
比較的やりやすい左耳にパチン。一瞬の衝撃だけで全然痛くない。位置もばっちり。やった、大成功~!この調子で右耳もサクサクいっちゃおう~!
これが間違いでした。
右耳は、非常に見えにくく。パチン。あーーーーー!左と全然位置が違う!てか、端っこ過ぎて、ダメだこりゃ状態。むむむ・・どうしよう・・
1時間、考えた。このまま気にしないでいくか、打ち直すか。
よし、やり直そう。どうしても気にいらない。右耳は外して、新しいピアッサーを注文。早く来いっっ!
3日後、再び挑戦。今度は失敗したくない。
「ねぇねぇ、見てるだけでいいから確認してくれない?」娘その2に頼むが、怖がりな娘は悲鳴を上げて逃げてしまった。一人で頑張るしかないのかよ・・
どうにかこうにかパチン。うぅやっぱり左程パーフェクトな位置ではない・・が、1回目よりはかなり良し。仕方がないこれで我慢するか・・
こうして、ファーストピアスというやつを、なんとか両耳につけたスミレだった。
このファーストピアス、毎日消毒しながら1か月つけたままにしておく。
それは決して簡単な道のりではないのであった・・続く