スミレの50のお祝いに

生誕半世紀を記念してしてみたこと

はじめてのジャザサイズは、脳を機能不全にする装置だった。

 マイボス(スミレの上司。少し年上、女性。)が、ダイエットにチャレンジした折に挑戦したジャザサイズに誘ってくれた。彼女は、1か月で体重を落とす賭けを誰かとして、見事痩せたのだ。ジャザサイズは、その時にやって、「かなり汗をかいてすごい筋肉がつくよ」と言う。

 今スミレは、いろいろ初めてのことに挑戦するにあたって、体力の衰えを危機的に感じ、筋肉を落とさないよう筋トレを積極的にやることにしている。ならばと、やってみることにした。

 

 じゃぁ一緒に行こう、と北九州のとあるジャザサイズスタジオへマイボスと向かう。1回だけの利用というのができるところがいい。

 

 ところで、ジャザサイズとは何か知っていますか。

 よく知らなくてもいいのだ。音楽に合わせて身体を動かすフィットネスプログラムである。

 実はスミレはジャザサイズにはちょっと思い入れがある。もう20年以上前になるが、新聞でジャザサイズが楽しい、という記事を見て、スミレはすぐやってみたいな~と思ったのだ。ところが当時はまだぜんぜん知られていなくて、ジャザサイズといっても知っている人に会ったこともなかった。だから諦め、そのうち口にすることもなくなった。それが、今では結構知られた存在になっている、なんかちょっと悔しい感。早くからジャザサイズいいって思ってたんだからね。

 

 スミレたちが入ったそのクラスには、全部で20人ほど生徒さんがいた。みなさん、慣れた雰囲気で、まず格好がおしゃれである。ジャージとTシャツ、いかにもダサダサは、スミレとマイボスだけである。ちょっと不安がよぎる。

 広いスタジオにはステージがあり、先生はそこで生徒方向を向いて踊ってくれる。私たち生徒は、とにかく先生のまねをして踊る。

 始まりの時間になった。今から一時間、マイボスによると休みなくびっしりと動き続けるらしい。ドキドキである。

 先生は大音響でアップテンポな音楽をかける。そして、ひっきりなしにマイクで右手を云々とか前とか後とかわいわいわめいているのだが、音楽がうるさすぎて何を言っているのかはっきり聞き取れない。先生と向きも違うので、初めはよくわからなくて戸惑ったが、先生の真ん前にとても上手な生徒さん(ピンクの服を着ていたのでピンクちゃん)がいて、その人を見ながらやるのが分かりやすいので、先生とピンクちゃんを半々に見ながらついていく。

 なるほどなるほど、ここで手を上げて右向いてふむふむ。

 ダンス系は好きなので、結構頑張って楽しく踊っていける。先生もピンクちゃんもハイ!とかヘイ!とか声を出しながらピョンピョン飛び跳ねノリノリだ。スミレも負けじと踊り狂った。右に左に前に後ろに、リズムに合わせて飛び回る。

上手にできると楽し~い!スミレなかなかやるじゃ~ん!

 

 しかし、いかんせん、体力なしのスミレである。この大興奮ぴょんぴょこ踊りはいったいいつまで続くのか?20分もしたらよれよれになってきた。

 一曲ごとに、生徒は皆水を飲むが、休憩というわけでもなく「さぁ次の曲行きますよ~!」と先生の元気いっぱいな掛け声がかかるのだ。

「手を抜くのよ、手を抜いて休むのよ~」と後ろからマイボスのささやき声がする。そう、マイボスは初めから頑張ったりしないでゆる~く適当なのだ。スミレのダンス好きが仇になった。

 足が上がらなくなってくる。頭もしびれてくる。汗はどくどく流れる。息もゼイゼイだ。まだ?まだあるの?

 

 クラスが始まって40分後、どうやらやっとぴょんぴょこ踊りは終了したようだ。「ダンベルを持って~!」と指示が入る。1キロずつのダンベルを握る。

 さぁ今度はダンベルを持って踊る。さすがに少しスローなテンポだが、念入りな動きで腕を動かすので、重いー。しかしここは負けられない。もともと筋肉を付けたいのだ、必死で腕を動かす。

 次はマットに寝転んで脚の筋肉を鍛える動きになる。身体の片側を下にして、上になった足を上げたり下げたりする動き、よくあるでしょ。

 ところが、ここでスミレの筋肉は限界に達した。もうどうにも動かなくなったのだ。上がらない。あぁっっ!もうだめっ!

 

 足は全く上がらなくなった。

 周りを見渡すと、マイボスとスミレを除いてみんなまだ動いている。さすがだ。仕方ない、この動きは休憩。

 次にストレッチになってやっと追いついて動けるようになった。そのまま何とか最後までいく。終了。

 スミレは身も心も真っ白に燃え尽きた。

 

 体が疲れる、ということはあるけれども、頭がこんなに真っ白になったのは初めてかもしれない。もう何も考えられない。頭が全く動いてくれない。夢の中にいるように、ぼんやりとしか考えられない。身体も動かないし、肩がすでに筋肉痛だ。

 車を運転して帰ったが、これは危険かもしれない、と思うほど脳は動かなかった。家では寝転がってぼんやりとテレビを見て(こういうことは滅多にしない)そのまま死にそうだ。

 運動って、しすぎるとこんなに何にも考えられなくなるんだ。知らなかった。

運動ばかりする高校生が勉強できないってこういうわけか(いや違うでしょ)。

みなさん、無理な運動はやめましょう。脳が働かなくなります。

 

 ジャザサイズを一時間楽しむには、かなりの体力を要すると思う。

だが楽しい。次の日の午前中まで、もう二度とやれないと思っていたが、午後になって体力が回復してくると、踊れて楽しかった記憶がよみがえる。

ついていけるようになりたい。