スミレの50のお祝いに

生誕半世紀を記念してしてみたこと

はじめての城崎温泉は、カニフィーバーだった。

2015年11月、城崎温泉で一泊した。

 スミレにとって城崎と言えば、教科書にのってた、志賀直哉「城の崎にて」。だが全く記憶にない。読んだのかどうかさえ覚えがない。志賀直哉の「城の崎」と、スミレが行った「城崎」が同じ場所なのかもよくわからないが、とにかく城崎温泉だ。

 知らないことだらけで恐縮だが、兵庫では城崎と言えばなんといっても「カニ」らしい。城崎へ向かう電車内もカニカニカニと宣伝しまくっている。

 城崎駅を出れば、カニ型のベンチがお出迎え。海産物やさんが盛況で、みなカニの郵送を頼んでいる。カニ以外にもいろいろあるのだが、とにかくカニだらけだ。

 そしてこの日は、観光客で沸き返っていた。

 旅情を感じるレトロな商店街だが、狭い道をすれ違う大型バスは渋滞して動かない。柳に石橋、趣のある温泉宿。全体に雰囲気はひなびた感があるが、人が多くて活気に満ちており、なんかぜんぜん思っていたイメージと違っていた。

地元にはいいことなのだろうが、ちょっと落ち着かない感じ。

 

 街はざわめき過ぎているが、宿もお湯も気持ちよく、もちろんカニも楽しめた。市場で買ったカニを持ち込んで食べたが、ものすごく美味しいカニだった。

 だが、一番のカニは、斉藤製菓店の「大かに最中」だ。かにを模った最中なのだが、大きさが15cmはある。ひょろながくて、中にあずき、柚、抹茶の3種類の餡が入っている。

ガイドブックに載っているのを見て、買い求めたのだが、店は本当に「昔からあります」という古いたたずまい。ショーケースに陳列している見せ菓子は、日に焼けて色あせ、別物かと思うほどなのだ。味が違うのかと思ったよ。

「あ、このお菓子旅館に置いてあったのじゃない?(名前が似てた)」と、スミレたちがはしゃぐと、お店の人は、「うちのじゃありません。うちのお菓子はここでしか売ってません。」と老舗のプライドでにこりともしない。

 大かに最中五個入りを買って帰った。

 家で開けたら、箱のサイズが大かにとはぜんぜん合っていない。横幅が1㎝程余って、カニが、がこがこ動いて片側若干つぶれてしまっていた。しかも「昔ながら」なので、このカニ、最中にくるりと和紙を巻いているだけの包装で、両端は無防備。大きすぎる箱の中に、つぶれた最中の香りがダイレクトに充満して、これはこれで衝撃的に美味しそうなのである。

 この箱、きっと他の菓子にも使えるようになってるんだろう。ウケた。

 こういう気にかけなさ、いいわぁ。スミレの好きなタイプよ。

もちろん味もよかった。餡がねっとりどっしりしている。老舗だもんね。

 城崎温泉伝統の銘菓、お土産に是非どうぞ。

 

 

 

はじめての竹田城跡で、石垣萌えになる

 2015年11月22日、兵庫県の竹田城跡へ向かう。

 雲海の中に浮かぶ写真が有名で、「天空の城」と呼ばれる、城跡だ。石垣だけが残っている。

 絶景写真集が好きなので、確かに写真は見たことがあるけれども、正直どこにあるのか知らなかった。そうか、こんなところにあるのか。ちょっと楽しみ。

 

 この時期雲海も見えそう、と思ったが、せっかくのお休み、焦らず朝はゆっくり寝ることにして、昼近くに竹田駅に着く。ここからはバスで山の上まで行かなくてはならない。歩いていくのはかなりあるらしい。だが、駅から裏の山を見上げると、そこに城壁が見えているのである。高い!が、近く見えるのになぁ。

 客は多く、バスは並んで2台目にやっと乗りこめた。駅からの竹田城は絶壁の上、という感じで、バスはぐるっと回ってその裏側から攻める。山の上も、車と人がわんさかいる。山頂よりずっと手前までしか車は入れない。バスを降りて、10分程ひたすら坂を上っていってやっと、竹田城跡に足を踏み入れることができる。

 石垣に囲まれた土地は、土嚢のようなものが敷かれてて、フラットではなくでこぼこして非常に歩きにくい。油断するとすぐコケそうだ。足腰の弱い人は注意。 

 

 石垣しかない。石垣だけが美しく波をつくっている。

石垣だけなのに!石垣だけなのに、これがもう、周りの景色、雲や空、囲まれた山々、眼下の平地とあわせて、もうもう、きれいなのですよ、本当に。

 しかもかなり広い。この見渡せる感がスミレをワクワクさせる。

 たぶん、いや間違いなく城がないから余計に美しく見える。腕がないからいいという、ミロのビーナス効果のようなもの?

 

 これに雲海が見えたら大興奮だろうな。この日の朝もたくさんの人が登ったらしい。一体何時に開いているのか見たら、なんと午前4時から入城できるとか。参りました。皆さんすごいのね。

 とはいえ、昼間でもたくさんの人が竹田城跡を楽しんでいた。スミレもとても楽しかった。石垣にこんなに興味を持ったのは初めてだ。これからは石垣見る目が変わっちゃうね。

 

 ちなみに、この次の日、スミレは城崎温泉から出石へ向かっていたが、あちこちに雲海が見えた。きっと竹田城跡も見事に「天空の城」状態になっていたんだろうな。

 

 また、行ってもいいかも。石垣loveだわ。

 

書寫山ではじめての写経は、ちょっといい心の洗濯

  姫路城へ行く前に、バスで書写山へ行ってきた。紅葉が綺麗なところだが、今年は暖かくてまだ色づいてはいないだろう。それでも天気は良いし、紅葉狩りへという人が多そうなので、姫路城より先に書写山を楽しむことにしたのだ。

 

 書写山。写の字は寫が正しいみたい。圓教寺というお寺が山の上にあるようだ。「西の比叡山」と言われるとか。

 バスを降りると、いかにもな山ガールたちが沢山いる。スミレはロープウェイである程度登るのだが、山ガールたちはたぶんロープウェイを使わないで登るのかな?一日ゆっくり山を楽しむガールたちなんだろう。

 手早く楽しみたいスミレはロープウェイで山上駅へ。景色も楽しいがやはり紅葉はほとんどない。それでも山ってだけで空気は澄んで気持ちいい。少し寒いくらいが、歩いて回ると温まって調度快適である。この日はウォーキング日和だった。

 山の上にもバスはあるようだが、こんな日にバスに乗るのはもったいない。所々に色づいている紅葉を楽しみながら、三つの堂というものを目指す。

 大講堂、常行堂、食堂(じきどう)というのが、圓教寺の見どころらしい。手前にもいろいろ院やら殿やらがたくさんあって、もみじまつりの特別公開とかで、狩野派の襖絵や天井絵など、見る物はたくさんある。姫路城に住んでた本多家の墓などもあった。

 

 さて、メインだ。広場を囲んんで三つの堂が建っている。この寺は、お坊さんたちが修行する場だったそうで、合宿場みたいなものだったのだろうと思われる。

 その食堂で、修行をしている人がいると思ったら、観光客向けの写経であった。写経といっても、小さいひとひらの葉型の用紙を筆ペンでなぞる、お手軽なもの。

 ラッキー! はじめての写経である。やるやる~!

 正座して、息を整え書かれている文字をなぞる。なんと書いてあるかは知らぬが、葉は何色かあって、字も違ってて、何を願っているかも違うらしい。

 ちなみに一緒に行ったしろまるひめ(そのゆるキャラにそっくり)が、「金運がつくのはどれ?」と聞くと、係のオバサンは一瞬絶句し、スルーしてしまった。なので、金運はないらしい。家内安全とか、健康とかならある。

 

 スミレは筆で字を書くのが好きだ。あまり上手ではないが、ちょっとだけ上手。

小学生の頃から習字というものをしていたが、ぜんぜん上手にならなかった。字が汚いといつも言われていた。いくら習っても上手にならないので教室を止めた。

 スミレの悪筆を救ったのは丸文字である。中学生くらいか、その頃は変態少女文字などといわれた女子特有の丸文字が流行ったのだ。丸文字なら何とか書けた。そして読むに耐えたらしい。離れたところの祖母が手紙で「字が上手になりましたね」と書いてきて、そうかやっぱり今までは下手だったのかと納得したものだ。

 習字では大きな筆で半紙に「午後」など書いていたが、その後小筆でいろはにほへとを書くのを、書道の先生に習う。

 その頃からやっとスミレの字は、ふつうにちゃんとしたものになっていった。と、思う。20歳になるころか。

 書道を続けてはいないし、修行もしてないし、だから上手ではないけど、悪筆を知っているスミレ的には、十分上手な腕前の現在なのだ。

 

 そうして心を込めて書いた写経に(といってもなぞるだけだけどさ)願い事を書いて提出?する。うん、心洗われた気分。写経、というか修行的なものって、自分の魂が浄化されるような気持ちするよね。

 だから修行って楽だろうな、など思ってしまう。心の汚れを落としていくことに邁進すればいいんだもの。考えないでこなせばいいような。

 いえ、すみません、本当はそんなことない、奥の深いものなんだろうけど。

 

 少し綺麗になった魂を担いで、下界へ降りることにする。

 世俗にまみれて生きるのがスミレであるが故、こうしたたまの浄化が大切だなぁ。

 山や寺の必要を感じた書寫山。紅葉してなくても気持ちよいところであった。

 

  

はじめての姫路城は、城好きでなくても圧倒される美しさ。

 2015年11月21日、白鷺城、国宝であり世界遺産である姫路城へ行ってきた。

今まで、姫路城は新幹線から見たことがある程度。黒田官兵衛や秀吉にゆかりのある(住んでたってこと?)城らしい。スミレは城に特に興味を持ったことがないのでよくわからない。城好きは今多いらしい。

 

が、結論から言って、姫路城は美しかった。

 大きくて優美、白鷺とはよく言ったものである。予習した「るるぶ」の写真では瓦までも白く見えたが、これは角度によるようだ。瓦ではなく、瓦の継ぎ目が白く漆喰でとめられているのであった。

 石垣がまた美しい。どうやってこの岩や石を積み上げ壁面に仕立てたのか、見れば見るほど面白い。

姫路城のうんちくについては、調べればいくらでもわかるので、ここにはスミレの感想だけ書いておく。

 場内は武器を置くところが沢山あって、そこにびっしり刀や槍が並んでいるところを想像するとワクワクする。きっと整然と使いやすく収納されていたに違いなく、スミレはそういう機能性が大好きなのだ。

 城の天守閣から見る姫路の街は気持ちよかった。しかし風は吹きっ晒し、15時を過ぎるともう場内はとても暗い。昔の人はこんな暗闇で暮らしてたんだなぁ。ロウソクの灯りなんかはあるだろうが、そりゃぁ夜は寝るしかなかったろう。そんな昔の暮らしを想像できるのもよかった。観光向けに蛍光灯とかなくて。

 

 ひとつ何だこりゃと思ったこと。

 スミレが行ったこの日から、天守閣に登るには整理券がいるとされ、朝一番の新幹線で姫路についたスミレはまず整理券をもらいに行った。城より先に寄るところがあったからだ。

 ところが、14時にスミレが城に入り、16時近くに出るまで、整理券は配られ続け、天守閣に登る人が少ないわけでもなく、延々と約1時間並んで待つのだ。この整理券に何の意味があるのか、まったく分からなかった。朝取りに行ったのが無駄だった。

 なにぶん管理する方も初めてのことだから、人数とか予測つかなかったのかもしれないが、意味ある改善を期待する。

 

 スミレは少し、石垣に興味を持った。なんであの隙間に入ってる石、抜けないんだろう?上手いことハマってるもんだ。不思議。

 

 

 

したことない事を探す日々

 50個のやったことない事をやる、と決めたものの、何をやるかは決まっていない。

今のところ考え付いているのは、15個くらいか。

本当にやりたいと思ったことで、その気さえあればできることは、もうしてきた。

だから、この企画でやったことない事は、そんなに興味がなかったけど、せっかくだからやってみようかということになる。

ちなみに参考文献はこれ。

 

死ぬ前に1回やっとこう

死ぬ前に1回やっとこう

 

 この本面白かったのだ。コスプレとか、ナンパとか、したことない事をしている。

この本のゆるくていい加減な感じで、やったことない事をやってみようと思っている。

 

スミレがぜひやっておこうと思ったのは、宝塚歌劇を宝塚劇場で見てみたい、くらいで、あとは是非っというのはないかもしれない。

あんまりお金がかかりすぎるのも却下。でもって達成感がある方がいいよね。

などと考えて。

今やろうと思っていること。

 

流星群を観察する。

ピアス穴をあける。

スイーツマラソン。

自転車で通勤(一日)

断食。(一日!)

友人たちと旅行に行くので、その行先や食べ物で初めてなもの。

ボディボードとか。

競馬(ギャンブル代表)

 

これいいかも、と思うもの、例えば航空ショーなんて見に行くのいいかも、と思ったが、日程がなかなか合わず、今年は断念した。来年行くかもしれない。

季節や時期が限られるイベントは早い計画が必要だ。

よく富士登山を勧められるが、遠そうきつそう、装備や旅費でお金かかりそう。

 

小さいことを数えれば、いくらもあるのだ。例えば新しい店に行った、初めての道を通った。知らない人と話した。人生は新しいことだらけだ。

でもそれじゃぁつまらない。

スミレ基準で申し訳ないが、この「初めてシリーズ」に入れるかどうかは、ある程度やろうと思って計画したもの、多少の苦労が伴うもの。にしよう。

やりたくないことは、しない。やってもいいなと思うもの。

何かないでしょうか?と今日も考える。

 

何をやっている時が一番楽しいか

 師匠(スミレのお作法アドバイザー)に50周年記念事業の計画を話して、「何かやることないでしょうか」とお伺いを立てた。

師匠は、スミレより少し年上の、上品で優しい奥様である。

「ふむふむ、スミレちゃんは何をやっている時が一番楽しいの?」

「はい、スミレはゴロゴロしてマンガ読んでるのが一番好きです!」

師匠が一瞬絶句した。「あ~・・、スミレちゃんいつも忙しいからね・・」

50歳になる女が言うべき言葉じゃなかったですかね。

でもホントなんだもん。スミレ正直だから、素直に答えただけだい。

 

 そうなのだ、綺麗に片付いた自分の部屋で、ゴロゴロしながらマンガや本を読んでいるのが一番楽しい、それにコーヒーやお菓子があればなお素敵。休日そうして本の世界に飛び立ち「あ~しあわせ~!」と実際に叫んでいるのだ。

 どこにも行かなくても、なにかをわざわざしなくても、本当に幸せなのである。

 だから、この50周年記念事業は、スミレが酔狂で決めた、自分の首を絞めるような企画なのだ。

実際、読む本が溜まり、身体の疲れが溜まり、馬鹿なことを決めたもんだと自分で自分をポカスカ殴る夢を見るほどである。

 

しかし、決めたことはやる。

やるぜ。

はやく50個やって、ゆっくりゴロゴロしよう♡

その日のことを思うと顔がにやけてくるスミレである。

 

 だから師匠、なにかスミレがやったことない事、でもってスミレがやってみてもいいかなと思えること、考えて。

 

 

 

 

はじめてのパラグライダーは、指導員さんに頭下がりました。

 2015年11月3日、パラグライダーに挑戦。

 スミレは、高所恐怖症ではないが臆病者で、リスクの高いことはしたくない。だから今まで「もしも落ちたら死ぬやん」というものは積極的にして来てない。バンジージャンプや、スカイダイビング、グライダー系。

 だが先日バードマンはしちゃったし。そもそもこの50周年記念事業の案を出してくれたアシコにつきあって、パラグライダー体験を申し込む。

 市政だよりで見つけた平尾台(北九州市)の体験教室に申し込むと、

「本当に初心者向けのコースで、タンデム(二人乗り)で実際に飛ぶとかではなくて、運が良ければ1メートルくらい浮いて10メートルくらい動くという感じですけどいいですか?」

 あらちょっと物足りないかも~。だが高所恐怖症のアシコにはちょうどいいらしい。まぁ初めてのことに変わりはないし、お付き合いいたしましょう。

 

 当日、言われた通り滑り止め付きの軍手を持って集合すると、たくさんのオレンジ色ジャンパーを着た人々が集まって打ち合わせをしている。どうやら指導してくださる方々らしい。それにしても多い。初心者ひとりに3人くらい指導者がいそうだ。

 はじめに名前を呼ばれて、パッと見の体重を判断され3チームに分かれた。体重によって・・(えーとあれなんて言うんだろう、ぷわっと浮かぶ部分・・わからないからパラと呼ぶ。)その、パラの大きさが違うらしい。スミレもアシコも一番小さいパラチームだ。カップル(指導のオジサンがそう呼んだ。仲良さそうにしていると「カップルですね?」とマイクで確認されるのである。)は、同じチームにしてくれる。

 

 まず、パラを浮かせて地面を走る練習。パラは細長い筒を並べたような形で、その中に片側から風をはらんで、ぶわりと膨らみふわりと宙に浮く仕組みである。

 4人チームでじゃんけんして、一番手はスミレだ。

パラの空気を入れ込む部分を風が吹く方向に向けて広げる。パラからビャーとたくさんひもが出て集まったところに芋虫のようなリュックのようなものがあり、ヘルメットを付けたスミレは、それを背にからう形で装着。方向を操作する握り手の付いたひもと、もうひとつ、ひもを左右の手に2本ずつ握る。

スミレの両脇と後ろに3人の指導員、その他4、5人がパラを支えたり周りで声掛けしたりひもの様子を点検したり。チームの他のメンバーはパラ支えを手伝う。

こりゃ大変だ。ものすごい人に面倒見てもらって有難いような、申し訳ないような。

 

 「さぁ行くぞ、声をかけられたら「ドン!」という感じで前のめりに、でも顔は前向いて力を込めてください」

「ドン!」が大事ですから!と言われる。風の吹く方向へ向かってあっち向いたりこっち向いたり方向もこまめに変える。そしていい風が吹くまで待つ。

この日は、風が少なく、方向も変わるのでやりにくかったようである。でもいい風が吹いていたら、ここにいる指導員さんたちは自由に飛びたくて指導なんてしたくなかったろう。

 吹いたぞ!さぁ大勢に支えられながら「ドン!」

その時に手はw型に、肩よりやや後方に置いて前に持ってこないこと。

ぐえ~っっ!全然動けない!前のめりになるどころか、後ろへ引っ張られる!それを周りの指導員さんたちが全力で押し込んで前へ持っていくといった感じ。

後ろが全く見えないので分からないが、身体がすっと楽になり、パラがあがったらしいとわかる。走れー!と言われとにかく前へ走る。地面をうまく蹴れない。身体が浮いて力が入らないのだ。それでも全力で走ると、「フレアー!」

この声で両手を下に降ろす。それまでずっと手はw型に上げたままだ。パラがぐにゃりとつぶれて落ちてくる。終了。

これをチームで交代しながら、何度も繰り返して練習するのだ。

 

 後半は、パラを上げ走って宙に浮く、を練習する。浮いたまま飛んでいかないように身体にロープを結び、指導員さんたちが持っていてくれる。つまりこの方々は、初心者と一緒に走らないといけない。それも何度も。

 いやいやいや・・・すごすぎる、有難すぎる方々である。オジサンたちは汗だくだ。

 風が安定して吹かないので、結構じーっと風を待ったりした。でも、オジサンたちにとってもスミレにとっても、それくらいが調度よかった。

何しろ、パラを上げるのにものすごく体力を使うのだ。途中からスミレは肩が凝って痛くてたまらなかった。全力で走るので息も上がってひーはーだ。

 

 だがしかし。大変だけれど、だがしかし。

ほんの1メートルほどでも、ふわりと浮く感覚は高揚感が半端ない。ヤッタ―浮いたー!と周りも大喜び。風になったよう、とはこのことか。持ち上げられた感じではない、とても自然な飛翔なのである。あぁこのままずーっと飛んでみたい・・。

 

 パラグライダー、してみたい・・遠くに浮かぶパラグライダーを見ながら、スミレとアシコはいつか必ずあの高みまで浮かんでみようと誓い合ったのであった。

何しろアシコが虜になるくらいなのだから、パラグライダーの魅力は計り知れないのである。

あの指導員の方々も、その魅力に取りつかれ、ああまで頑張って体験教室をしてくれているんだろうなぁ。

指導員さん、ありがとう。またいつかお会いしましょうね。